カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルから見る世界傾向Vol.3
2024.10.4 (最終更新:2024.10.18)
「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」は、フランスの南、カンヌで行われる世界最大規模の広告・コミュニケーションフェスティバル。今回はVol.3のご紹介です。
P&G、ユニリーバという“2大消費財企業” それぞれが捉えるマーケティングの「先」と戦略を紹介します。
日常に原点回帰のP&G
セッションのタイトルは「Finding Creativity in the Everyday(日常における創造性の発見)」。創造性は日常のささいな瞬間の中に眠っており、そうした創造性の中には、企業やブランドを指数関数的に成長させうる、イノベーションの可能性が秘められているとした。こうした創造性をどのように発見すればよいのだろうか。
1.ブランドと人々の接点を観察、体験、共有して理解する
2.ブランドが貢献する“日常の瞬間”を見極め、価値を定義する
3.生理的、感情的に心が揺さぶられる瞬間を捉える
日常の様々な瞬間におけるブランドと顧客の接点を理解し、一瞬における人の感情的な変化にスポットを当てブランドが寄り添う。それによって、人の記憶に残る体験を提供することが重要だと。
事例として、中国で展開するハンドソープ「Safe Guard」の動画では、家族の生活の中で当たり前に交わされる「食事の前に手を洗ってきなさい」というシーンをピックアップ。家庭にはこうしたちょっとした家族の絆を実感できる瞬間があること、そしてその瞬間にSafe Guardが寄り添っていることを示した。
今回示した日常における創造性は、店頭や商品そのものの体験の瞬間以外にも“ブランドが寄り添っている瞬間”を取り上げ、その根底にある強い共感性をスケールアップできるよう、ブランドアクションに落とし込むことを指している。
このような内容から、これから益々生活者の瞬間をインサイトしていくことが重要だと思います。
「2つのYOU」の必要性を説くユニリーバ
セッションタイトルは「YOU」。YOUには“2種類のYOU”がある。 1つ目のYOUは日常様々な商品を使用する一人の生活者としてのYOU。2つ目のYOUはビジネスのプロとしてのYOU。人間を観察し、理解し、ニーズを満たす提案を実現すること。これを実行するためのインスピレーションは、自分の日常から得られる。1人の生活者としてのYOUを大切にしなければならない。しかしただの生活者で終わってはいけない。マーケターとして、自分自身に潜む思い込みや偏見に惑わされず、人の本質に目を向けられる力を養うことが大切。人をしっかり把握・理解し、自分が培ってきた情熱、能力、経験を注ぎ込み、ブランドを通じて生活者に対して創造的で魔法のような提案をしなければならない。創造的な提案は、ビジネスの中にある、2つのYOUの出会いから常に生じるとこと。
ユニリーバが信条としているマーケティングを体現する事例として、スキンケアブランドのDoveが世界中で展開してきた「Real Beauty」。 「Real Beauty」は2024年で20周年。「Real Beauty」は20年間一貫して“世の中の美の尺度ではなく、あなたらしい美しさを大切にしてほしい”というメッセージを掲げ、様々な表現手法を駆使して多くの女性を勇気づけてきた。人間理解の先にある、誰一人として同じではないという多様性への共感と、その共感を具体的に示すための一貫したブランドアクションが重要であるとした。
2大消費財企業の共通点と異なる部分
共通しているのは、「人間をよく観察し、寄り添え」という部分。人の観察とそこから得られる洞察を基に創造性を発揮し、価値ある提案を実現していくことは企業に求められる本質的な活動であり、基本だといえる。
異なる部分は、 P&Gは日常にある創造性をスケールさせてビジネスにする、王者・王道のマーケティングの実践。ユニリーバは、拡張するといったことよりも一人ひとりの個性や多様性に寄り添い、企業として包摂性のある提案をしていくことを志向しているんじゃないでしょうか。
2社の戦略方針の違いは、これまでの歴史やアイデンティティの違いが関係しているんだと思います。
この情報を閲覧したときに感じたことは、自社・ブランドがこれまでの歴史と背景から再解釈・再定義し、現在の環境と自社・ブランドを照合したときに、捨てるものと残すものを選択し、進むべき方向性と方針を明確にすることが非常に大切だと感じました。
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