カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルから見る世界傾向Vol.1
2024.9.24 (最終更新:2024.9.24)
「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」は、フランスの南、カンヌで行われる世界最大規模の広告・コミュニケーションフェスティバル。
イーロン・マスク氏なども参加し、最先端の事例や情報が飛び交い、次世代の思考などが満載です。
海外の紹介内容などの情報も含め数回に分けてご紹介します。
「パーパス」から「ユーモア」へ
海外の情報でよく見るのは「ユーモア」というキーワード。人間性とユーモアが創造の中心であり続ける。
ここ最近、パーパス(企業およびブランドの存在理由)や社会課題解決などを重視した考え方がスタンダードになっていました。パーパスというフレーズで広告を出稿している企業も多くありました。パーパスだけだと企業やブランドが生活者一人ひとりと深い絆を構築していくのは難しい。
海外のリポート情報を見ると、ブランドがユーモアを使うと「80%の人がそのブランドから再び購入する可能性が高くなる」、「72%の人が競合よりもそのブランドを選ぶ可能性が高くなる」、「63%の人がそのブランドでより多くのお金を使うようになる」一方、95%のビジネスリーダーは、顧客とのコミュニケーションでユーモアを使うことを恐れていると掲載している。
ではユーモアを活用するポイントは何か?その事例として日本でも馴染みのある「IKEA」と「Heinz」が紹介されていた。
「Life is Not an IKEA Catalogue」では、IKEAの家具が嘔吐、 ペットのおしっこなどの犠牲になる様子を包み隠さず見せた。
「Heinz Ketchup Insurance」は、ケチャップの“事故”に対応するホットラインを開設し、月間エンゲージメントを大幅に向上させたそうだ。ユーザーのリアルをブランドに取り込むことで、愛着がより高まるということだろう。
「物語」から「瞬間」へ
もう一つキーワードとして気になったなのが「瞬間(moment)」。
P&GのMarc Pritchard氏は「Finding Creativity in the Everyday(日常における創造性の発見)」というタイトルで、「創造性は日常のささいな【瞬間】の中に眠っており、そうした創造性の中には、企業やブランドを指数関数的に成長させうる、イノベーションの可能性が秘められている」と説明している。
例として、家族の中で日常的に交わされる「ご飯を食べる前に手を洗ってきなさい」という会話に着目したCMや、突然海外研修を命じられた女性に対して夫が積極的に家事を手伝うことを宣言するCMなどの事例を取り上げた。
ユニリーバのEsi Eggleston Bracey氏は、幼少期からのヘアスタイルの変遷というパーソナルな話から始まり、「あなたこそが企業やブランドを人間らしくする」と話している。
「瞬間からムーブメントへ(From Moments to Movements)」「すべての瞬間がクリエイティブな<コマースの>瞬間(Every moment is a creative <commerce>moment)」 と「瞬間」の重要性を説明している。
「瞬間」を採用した事例
●Heinz
クラフトハインツは人気歌手テイラー・スウィフトがハインツのケチャップとクラフトのランチドレッシングを混ぜ合わせて食べている写真がSNSで盛り上がっていることに即座に反応。24時間以内に、売り上げが苦戦していた混合ソース「Kranch」を「Heinz Ketchup&Seemingly Ranch」と商品名を変えて復活させた。
●Coors Light
ビールの「クアーズライト」が米大リーグの大谷翔平選手の打球によって看板に穴が開いたことに便乗し、穴が開いた看板をパッケージにした商品を即座に発売して人気となった。
●DoorDash
レストランのデリバリーで知られるサービスの広告「DoorDash All-The-Ads」は、米国の国民的イベント「スーパーボウル」の視聴者にゲーム中の全広告の商品を獲得できる抽選に参加するために、異常に長いプロモーションコードを入力することを促した。「このキャンペーンは、文化的な『瞬間』を乗っ取り、人々に企業を新鮮な視点で見てもらうことに成功した」と、審査委員長のDebbi Vandeven氏は説明している。
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